建設業界では、猛暑による作業環境の悪化を受け、夏場の工事を見直す動きが本格化しています。国土交通省は建設現場で働く人の安全確保を目的に、暑さの厳しい時期に工事を休止・調整する「夏季休工」の導入を進めており、まずは公共工事から試験的な運用が始まる予定です。
この取り組みは建設業界全体へ広がる可能性があり、不動産投資にも少なからず影響を及ぼすと考えられています。
建設現場では猛暑対策が新たな標準へ
近年は夏の気温上昇が深刻化しており、炎天下での作業は熱中症など重大な事故につながるリスクが高まっています。そのため、建設業界では働く環境を改善するための対策が求められています。
主な施策としては、猛暑を避けた工期設定や、作業時間を早朝・夕方へ変更する柔軟な運用、必要に応じた夜間施工などが検討されています。これらは作業員の安全を守る一方で、工事スケジュールには従来とは異なる影響を与えることになりそうです。
新築物件は完成時期が遅れる可能性
不動産投資家にとって最も気になるのが、新築物件の完成時期です。
夏場に工事が中断される期間が増えれば、建築全体のスケジュールは長くなる可能性が高くなります。その結果、物件の引き渡しや入居開始が後ろへずれ込み、家賃収入のスタートも遅れることになります。
融資を利用しているケースでは、つなぎ融資の期間延長などによって金利負担が増える可能性もあり、収益計画に影響を与える要因となります。
工事費の上昇も避けられない課題
工期を短縮するために早朝や夜間、休日に作業を行う場合、人件費は通常より高くなります。
こうした追加コストは最終的に工事価格へ反映されるため、建築費や修繕費の上昇につながる可能性があります。
すでに建築コストは資材価格や人件費の上昇で高止まりしていますが、夏季休工が一般化すれば、さらに負担が大きくなることも考えられます。
修繕工事にも遅れが生じる恐れ
影響を受けるのは新築だけではありません。
アパートやマンションの大規模修繕、退去後の原状回復工事なども、夏場は職人不足によって着工まで時間がかかるケースが増える可能性があります。
工事が遅れれば空室期間も長引き、想定していた家賃収入を確保できなくなるリスクもあります。
また、大規模案件を抱える企業へ職人が優先的に配置されることで、個人投資家の比較的小規模な工事は後回しになることも十分考えられます。
地域によって影響の大きさは異なります
猛暑日が多い地域ほど、工事を休止する日数が増える可能性があります。
そのため、同じ工事内容でも地域によって工期や費用に差が生まれ、不動産経営の収益性にも違いが出てくることが予想されます。
物件選びや投資エリアを検討する際には、こうした気候条件も判断材料の一つになっていくかもしれません。
不動産投資家が今からできる対策
夏季休工が定着することを前提に、投資計画を見直すことが重要になります。
まず、新築では余裕を持った工期を想定し、契約時から完成時期に一定の余裕を持たせておくことが望ましいです。
修繕工事についても、できるだけ春や秋など比較的施工しやすい時期へ前倒しすることで、繁忙期を避けやすくなります。
さらに、工事費の上昇や空室期間の長期化も考慮し、資金計画にはこれまで以上に余裕を持たせることが必要です。
加えて、価格だけで業者を選ぶのではなく、長期的に付き合える信頼関係を築いておくことも大切になります。施工会社との良好な関係は、工期調整や職人の確保など、将来的なリスクを軽減する大きな強みとなります。
今後は「夏季休工」を前提とした投資判断が求められます
「夏季休工」のように、建設現場で働く人の安全を守るための取り組みは今後ますます重要になります。一方で、不動産投資家にとっては工期や建築コスト、修繕計画の見直しが欠かせなくなります。夏季休工を一時的な変化ではなく、新しい前提として受け止め、柔軟に対応できるかどうかが、今後の安定した不動産経営を左右するポイントになりそうです。
個人的には、働く人の安全を守ることを第一に考えながら、不動産投資家側もこれまで以上に余裕を持った計画を立てることが大切だと思います。
